NEC PC-MT8502AのCPUグレードアップ失敗とその理由

Pentium DからCore2 Duoに換装……できなかった。

NEC製 ValueOne MT850/2A (PC-MT8502A)

  • CPU: Intel Pentium D 820 2.80GHz
  • チップセット: Intel社製 82945G / 82801GR
  • システムバス: 800MHz
  • マザーボード型番: MS-7186N1M 10-A
  • BIOS: NEC、0007/272A0700、07/29/2005
  • メモリ: DDR2-667 256MB×2枚
  • HDD: Maxtor 250GB×2 (Raid0)
  • 電源ユニット: 350W

レガシーBIOS(AMI社製)。Windows XP(プリインストール)→Win8.1(アップグレード版)。メモリ1GBx2枚、グラフィックカード、サウンドカードを増設。

2005年8月発売、購入は2005年か2006年。約10年前のPCです。
ボトルネックはCPU。ブラウザ1つ起動しているだけでCPU使用率40%前後、Windows Update等も動くと一時的に100%近くになります。CPUが余っていたので、換装してみることにしました。

次の4項目がCPUに対応していれば使える可能性があります。

  • CPUソケット形状
  • チップセット
  • マザーボード(のVRD)
  • BIOS

(BIOSだけは、対応してなくてもなんとか動くことがあります。ただし、多少動作がおかしくなることもあります)

手元にあるCPUは、Core2 Duo E6700とCore2 Extreme QX9650。後者はチップセットが対応していないため、前者で試してみることに。

しかし、CPUソケット、チップセットはCore2 Duoに対応していますが、その他のマザーボードの仕様とBIOSについてはわかりませんでした。Intel 945チップセット搭載のマザーボードはCore2シリーズに対応しているものと、していないものとがあるそうです。

マザーボード上に「MICRO-STAR Model MS-7186」と印字されていることから、MSI製だとわかりました。しかし、OEM製品のため仕様は公開されていません。

また、NECのサポートページでBIOSを探したのですが、この機種は一度もBIOSアップデートがなく、(購入時のバージョンも含めて)ダウンロード可能なBIOSファイルはありませんでした。

とにかくやってみるしかないので、実際にCPUを換装。
→ まともに動作せず。

再挑戦したり調べた結果、マザーボードもBIOSもCore2 Duoに対応していないことが判明しました。

BIOSのマイクロコードを変更することはできます。しかし、マザーボードの方はどうしようもありません。結局、Pentium D 820のままで使用中です。

対応していないマザーボードでCPUを換装した結果、こうなった。

Core2 Duo E6700に換装してから、電源ケーブルをつなぐと、ゴォォォという音が。

  • 電源ボタンを押す前から電源・各種ファンがフルスピードで回転。
    (このPCの電源ユニットにはon/offの切り替えスイッチが無い)
  • BIOSが表示されない。
  • ディスプレイが真っ暗。
    (ディスプレイに信号が送られていない)
  • 電源ボタンを長押しすると、シャットダウンできる。

CMOSクリアや、グラフィックカード・内蔵グラフィックを切り替えてみたりしましたが効果なし。

元のCPUに戻すと正常に動作したので、壊れてはいません。

使用中のBIOSをバックアップし、そのファイルにマイクロコードにCPUID 6F6(下の表を参照)を追加、そのBIOSファイルでBIOS更新してみましたが、やはり結果は同じでした。

Pentium D 820 と Core2 Duo E6700 の比較
現CPU 換装できなかったCPU
CPU名 Pentium D 820 Core2 Duo E6700
動作周波数 2.80GHz 2.66GHz
コードネーム SmithField Conroe
対応CPUソケット LGA775 LGA775
プロセスルール 90nm 65nm
FSB 800MHz 1066MHz
コア数/スレッド数 2 / 2 2 / 2
S-Spec SL88T SL9S7
Core Stepping(Revision) A0 B2
CPUID F44 6F6
その他 EIET:× VT:× HT:× EIET:○ VT:○ HT:×
  • EIET = Enhanced Intel SpeedStep technology
  • VT = Virtualization technology
  • HT = Hyper-Threading Technology

CPUの詳細を調べる方法

現在搭載しているCPUについては、CPU-ZやHWiNFO等のソフトで調べることができます。CPU-Zの場合は、Toolsボタン→Save Report As .TXTで、詳細をテキスト保存できます。

未搭載のCPUや、S-Specによる違いを知りたい場合は、www.cpu-world.comで調べるといいでしょう。
「www.cpu-world.com (CPUの型番)」をキーワードにして検索する方が楽かもしれません。

S-SpecはCPU上に刻印されています。www.cpu-world.comで、Core SteppingやCPUIDから調べることもできます。(ただし、Core SteppingとCPUIDが同じでS-Spec違いの製品もあります)

マザーボードの何がCore2 Duoに対応していないのか。

疑わしいのは、Core2 DuoシリーズのCPUに必要なVRDバージョンに足りていないこと。

にわか仕込みの知識で恐縮ですが、下にまとめてみました。

VRD(Voltage Regulator Down)

VRM(Voltage Regulator Module)と呼ばれる部品(複数構成)が、マザーボード上のCPUや関連部品に送られる電流・電圧の微調整する。
その電流・電圧を適切に調整するための規格がIntel VRD。

CPUのシリーズによって要求されるVRDバージョンが変わる。
基本的に新しいVRDバージョンに準拠しているマザーボードは、古いVRDバージョンと互換性がある。ただし例外もあり。

http://pc.nikkeibp.co.jp/article/special/20080929/1008258
こちらのサイトによれば、VRD10とVRD11.0は互換性あり、VRD10とVRD11.1は互換性なし。

  • VRD11.0準拠マザーボード + VRD10.x対応CPU → ○
  • VRD11.1準拠マザーボード + VRD10.x対応CPU → ×
  • VRD10.1準拠マザーボード + VRD11.0対応CPU → ×

要求されるIntel VRDバージョン

  • Pentium D: VRD 10.1
  • Core 2 Duo、Core2 Quad、Core2 Extreme: VRD 11.0

参考: Intel製各CPUシリーズのデータシート (PDFファイル)

  • Intel Pentium D 800番台
    http://www.intel.com/Assets/PDF/datasheet/307506.pdf
  • Intel Pentium D 900番台
    http://www.intel.com/assets/pdf/datasheet/310306.pdf
  • Intel Core2 Duo Desktop Processor E6000番台
    http://download.intel.com/design/processor/datashts/31327807.pdf
  • Intel Core2 Extreme QX6000番台, Core2 Quad Q6000番台
    ftp://download.intel.com/design/processor/datashts/31559205.pdf
  • Intel Core2 Extreme QX9000番台, Core2 Quad Q9000番台, Q8000番台
    http://www.intel.com/content/dam/www/public/us/en/documents/datasheets/core2-qx9000-q9000-q8000-datasheet.pdf

Intel VRDバージョンの規格

下のURLでは、(出力)電圧の最小値と最大値の間を、VRD10.1の場合は12.5mV刻みで上下するのに対し、VRD11の場合はその半分の6.25mV刻みになっていると書かれています。

How-to: Compatibility of socket 775 for Intel systems
http://thandor.net/article/3

そこで、Intelが公開しているIntel VRD10.0~VRD11.1のデータシート(PDFファイル)で確認してみました。

確かに、VRD10.0と10.1が12.5mV刻み、VRD11.0とVRD11.1は6.25mV刻みになっています。

  • Voltage Regulator-Down (VRD) 10.0 - Intel
    http://download.intel.com/design/Pentium4/guides/25288503.pdf
  • Voltage Regulator-Down (VRD) 10.1 - Intel
    http://www.intel.com/assets/pdf/designguide/302356.pdf
  • Voltage Regulator-Down (VRD) 11.0 - Intel
    http://www.intel.com/content/dam/doc/design-guide/voltage-regulator-down-11-0-processor-power-delivery-guide.pdf
  • Voltage Regulator-Down (VRD) 11.1 - Intel
    http://www.intel.com/content/dam/doc/design-guide/voltage-regulator-down-11-1-processor-power-delivery-guidelines.pdf

マザーボードのVRDバージョンを調べてみた。

マザーボードが準拠しているVRDバージョンは、大半が非公表です。(公表されている製品もあります)

Pentium D 820で使っているので、マザーボード(MS-7186N1M)がVRD10.1以上に準拠していることは確かです。問題はVRD11.0か否か。
換装に失敗した時の状況からすると、VRD10.1のように思われます。

マザーボードのVRDバージョンを確かめる方法はないかと探したところ、PWM(Pulse Width Modulation) controllerがヒントになりました。

PWMコントローラは、VRM(Voltage Regulator Module)を構成する部品の一つ。
そして、VRMはマザーボード上の各パーツに供給する電流電圧を一定に保つもの。複数の部品で構成されており、CPUソケット周りに配置されています。ヒートシンクに覆われている部品もあります。

PWM Controllerの各メーカーと型番

  • Intersi製: ISL****
  • International Rectifier製: IR****
  • Analog Devices製: ADP****
  • Linear technologies: LT****

このマザーボード(MS-7186N1M)のPWMコントローラは、バックパネル側のコーナー寄り、CPUクーラーのプッシュピン穴の傍にありました。

MS-7186N1MのPWMコントローラ
ISL6566

ISL6566 Datasheet - Intersil (PDFファイル)
https://www.intersil.com/content/dam/Intersil/documents/isl6/isl6566.pdf

上のISL6566のデータシートをざっと見ただけですが、VRD11に適応できそうだと判断できるデータが見当たらず。出力電圧は12.5mVごとに書かれているので、VRD10.1以下と推測できます。

ということで、残念ながら、MT8502A搭載のMS-7186N1MマザーボードはCore2 Duoに対応していませんでした。
Core2 Duo以降を使いたかったら、マザーボードも交換しなければなりません。(マザーボード交換の場合、OEM版のWindowsは認証が通らなくなります)

どんなCPUなら使えるのか。

何か換装可能なCPUがないかと探してみました。

[条件]

  1. LGA775ソケット対応
  2. 945GチップセットのCPUサポートリストに載っていること。

    • Pentium4 505~571(Prescott、VRD 10.1)、630,640,650,660,662,670,672(Prescott-2M、VRD 10.1)、631,641,651,661(Cedar Mill、VRD 10.1)
    • PentiumD 805~840(Smithfield、VRD 10.1)、915~960(Presler、VRD 10.1)
    • Celeron D 341,351,355(Prescott-256、VRD 10.1)、347,352,356,360,365(CedarMill-512、VRD 10.1)
    • Pentium Dual-Core E2140~E2220(Allendale、VRD 11.0)
    • Celeron Dual-Core E1200~E1600(Allendale、VRD 11.0)
    • Celeron 420~450(Conroe-L、VRD 11.0)
    • Cor2 Duo E4300~E6700(Conroe、VRD 11.0)
  3. Intel VRD 10.1以下
  4. CPUIDがF33、F44、F41、F43、F44、F47のいずれか

    ↑ 現行のBIOS(AMI製)をAFUDOS.exe v4.33を使ってバックアップ、それをmmtool.exe v3.22で開いて対応CPUIDを調べた。(レガシーBIOSのため、各ツールは古いバージョンを使用)

    ※ 同じ型番のCPUでも、ステッピングが違えばCPUIDも異なる。

  5. 現CPU(Pentium D 820 2.8GHz)より性能が上

上の条件を全て満たしたのは、Pentium D 800番台(Smithfield)のPentium D 830(3.0GHz)と840(3.2GHz)の2つだけでした。
2つとも820より少しだけ性能がアップしますが、TDPも増えます。(Pentium D 820以下はTDP 95W。830と840はTDP130W)

ネットで検索したら、Pentium D 840への換装成功例がありました。

そして、Petnium D 960への換装失敗例も。(BIOS起動したりしなかったり)
もし、BIOSのマイクロコードを編集(CPUID F62・F64・F65を追加)してから、Petnium D 900番台へ換装したらどうなるでしょうか……。Pentium D 950か960を持ってたら試すのですが。

BIOS(AMI社製)のマイクロコードに変更を加える方法参照

ちなみに、Pentium D 900番台(VRD10.1)で注意しなければならないのは、ステッピングが異なれば、仕様もだいぶ変わることです。特にExtended Halt state(C1E相当?)、TDP(VR Configuration)、プロセスルール。

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