LGA1151 ASUSマザーボードBIOS復旧 1/2 ROM焼き
最終更新
- 2022/08/21
- BIOS Chipの容量の間違いを修正しました。
BIOS Flashback機能でも直らなかったBIOSの復旧
起動できなくなったマザーボードのBIOS Chipを、ROMライターを使って書き直し、無事復旧させることができました。
マザーボード: ASUS Z170 PRO GAMING (LGA1151)
ROMライターを使ってBIOS復旧する方法
ROMライターで、直接BIOS Chipに正常なBIOSファイルを書き込みます。
ユーティリティソフトウェアではうまくいかない場合でも、BIOSの修復・更新が可能です。
(ROMライターは、BIOS用以外のROM Chipにも使えます)
ROMライターを検索する際のキーワード:
ROM Writer、EEPROM Programmer、SPI Programmer、USB Programmer 等
必要なもの
- マザーボード(のBIOS Chip)
- ROMライター + ドライバ・ソフトウェア
- 別のWindows PC + USBコネクタの空き1
- BIOSファイル
オプション
- BIOS Chipを引き抜く道具 or ケーブル付きのテストクリップ or はんだコテ等一式
… BIOS Chipの形状と接着方式によって使い分け - BIOSファイルを加工するツール (ソフトウェア)
(BIOSベンダー・マザーボードメーカーによって異なる)
私の場合はROMライター1台を購入するだけで済んだため、出費は2,700円でした。もう少し安いROMライターもあります。
自分のROM Chipに対応していること、書き込めるファイルサイズの上限に注意してください。
基本的に輸入品のため、日本で購入できる種類は少ないです。
海外のサイト(米Amazonやebay等)の方が種類が多く、割安なものも見つかります。ただし、それなりに配送料と日数がかかります。
専用のドライバ・ソフトウェアはだいたいWindows用です。(中には、Linux上からコマンドで操作できるものもあり)
サポートOSバージョンの確認を。サポート外でも使えることもありますが、そこは情報収集しておいた方がいいでしょう。
また、Raspberry Piを使う方法もあります。こちらは、すでにRaspberry Piを使っている人向けです。興味があれば、「Raspberry Pi BIOS Flash」等でネット検索してください。
BIOS Chipの確認
ROMライターを選ぶ前に、マザーボード上のBIOS Chipを探して、型番と形状を確認しなければなりません。
マザーボードのマニュアル(PDFファイル)の、"Motherboard layout"の図で位置を確認しました。(かなり拡大してようやく見えました)
ASUS Z170 PRO GAMINGのBIOS Chipは1つだけで、CPUソケット・I/Oパネルとは対角になるあたりにありました。M.2.ソケットの隣です。
(マザーボード中央付近にBIOS Chipが配置されている機種もあります)
このマザーボードのBIOS Chipの型番は、winbond 25Q128FVIQ = W25Q128FVIQ。Winbond社製で、マザーボードのスペック表にもある通り、容量128MB 128Mbit = 16MB のFlash ROMです。
DIP8というタイプ。ICソケットの上に差さっています。ASUSとASRockのATXマザーボードはだいたいこれ(例外あり)。はんだ付けされておらず、比較的簡単に抜き差しできます。(SOP8等、別形状のものあります)
一応、Flash ROMには書き込み回数の限度がありますが、気にしなくていいでしょう。
W25Q128FVシリーズのデータシートには、10万回以上の書き込み・消去が可能、データ保持期間は20年以上と書かれています。
https://www.winbond.com/hq/product/code-storage-flash-memory/serial-nor-flash/?__locale=en&partNo=W25Q128FV
ROMライターを注文する前に取り外してみました。
取り外す前に、チップの向きを覚えておくこと。
ところが、指や普通のピンセット・ペンチで挟んで引っ張っても、ビクともしません。内側にギザギザがあるペンチでやったら、滑ってガリッて音が……。
IC引き抜き工具があればいいのですが。
ふと思いついて、家にあるものを使ってみたらうまくいきました。
ステンレス毛抜き
なぜか、我が家では裁縫道具として使われてきたもの。ぎりぎりでしたが、チップの長辺の幅まで広げて、はさむことができました。オペアンプの交換時にも使えそう。
土台(ICソケット)上のROM Chipを(Chipの足を避けて)しっかりと挟み、ゆっくりと真上に抜き取ります。
DIP8タイプのBIOS Chip
BIOS Chipを取り去った後の土台。これがICソケット。
注意!
BIOS ROM Chipの足は簡単に曲がってしまいます。少しでも曲がっていたら、形を整えなければなりません。決して折らないように。
BIOS Chipの型番でネット検索すれば、BIOSが書き込まれていない空のChipを購入できるところが見つかります。(ただし海外サイト) BIOS Chipを物理的に壊したとか、予備がほしい時にどうぞ。
また、各マザーボードの型番ごとに最新BIOS入りのChipも売られています。BIOSバージョンは選べませんが、それを購入すればFlashする必要はなく、自分でChipを交換するだけです。
SOP8等のはんだ付けされているタイプについて
形状に合ったテストクリップを使えば、取り外さないままFlashできるはずです。ただし、他の部品が邪魔でテストクリップでうまくはさめないこともあるかもしれません。
はんだ除去・付け直しを自分でやる場合は、はんだこて等の道具が必要です。失敗すると焦がして断線させてしまうかもしれません。やったことがない人は、あきらめてメーカーに修理に出した方が無難だと思います。
MSIマザーの場合はJSPI1ピンも使えます。ただし、JSPI1に接続するケーブルを購入(入手が難しい)または自作できればの話。
ASUS・ASRockの、インテル200シリーズチップセット対応マザーボード(Z270・H270・B250)について
BIOS chipがSOP8タイプになっています。インテル100シリーズ(Z170・H170・B150)までの製品の多くに使われていたDIP8タイプとは異なり、簡単には取り外しができません。代わりにBIOS ChipのそばにSPIピンヘッダーがあります。
価格.comのクチコミ
https://bbs.kakaku.com/bbs/K0000932620/SortID=20768616/#tab
こちらの方は、ROMライターをジャンパーワイヤでSPIピンヘッダーにつないでいます。配線を間違えずにやる必要があります。
一般の方には、テストクリップの方が楽でしょう。SPIピンヘッダーが邪魔にならなければいいのですが。
[2017/10/28追記]
現在、日本国内では、ちゃんと使えそうなSOIC8・SOP8 テストクリップの入手が難しそうです。
手間と日数がかかっても良いなら、ebay(https://www.ebay.com/)等の海外のサイトで探してみてもいいでしょう。キーワードは「SOIC8 test clip」。日本に発送してくれる出品者の所から、EZP2010で動作しそうなものを見つけてください。
ROMライター選び
日本国内ではAmazon.co.jp・楽天・ヤフオク等で購入できます。海外でよければebayやAmazon.com等。海外のサイトの方が種類がいっぱいありますが、到着までそれなりに日数がかかります。(日本に発送してもらえるのか、確かめましょう)
その中で、W25Q128FVIQ (128MB 128Mbit = 16MB)のFlash ROM対応で、16MBのBIOSファイルが書き込めるものを探しました。
ちょうどいい具合に、ROMライター EZP2010の使用方法解説動画を発見。ありがたし。
https://www.youtube.com/watch?v=1TaZqJPG75A
この動画では、Rampage V Extermeの? BIOS Chip(Winbond製 8-DIP 128MB 128Mbit)をFlashしています。EZP2010でW25Q128BVとして設定すれば、W25Q128シリーズ共通で使えるそうです。
早速、日本のAmazonでEZP2010を注文しました。(一番早く確実に届くから)
BIOSファイルの用意
メーカーのHPからダウンロードします。正常起動できた頃のバックアップでもOKです。
注意!
ASUS UEFI BIOSの場合は、BIOSファイルに変更を加える必要があります。
今回、ダウンロードしたBIOSファイル(.CAP形式)・バックアップしたBIOSファイル(.ROMまたは.bin)、両方用意しましたが、そのままFlashしてもBIOS起動には失敗しました。
ASUS UEFI BIOSファイルの変更方法は、次回の記事 BIOS復旧 2/2 BIOS編集をご覧ください。
他メーカーのマザーボードの場合は、ダウンロード→展開したファイルをそのままFlashすればいいみたいです。ただし、レガシーBIOSかUEFI BIOSかで変わってくるかもしれません。事前に情報収集しておくことをお勧めします。
EZP2010の接続・設定方法
使うのは本体とUSBケーブル、ドライバ・ソフトウェアが入ったCD-R(直径8cmのミニCD)です。
ACアダプタやアタッチメントもついていますが、今回は不要でした。(そのACアダプタが必要になるのは、PCに接続せずに、2つのチップ間で内容を直接コピーする時)
EZP2010をPCに接続
- 作業用のWindows PCを起動。
- EZP2010本体と、付属のUSBケーブルをつなぐ。
- USBケーブルのもう一方の端を、作業用PCのUSBコネクタに接続。
ドライバのインストール
8cmのCD-Rにドライバやソフトが入っていました。それをローカルディスクにコピー。
- デバイスマネージャーからEZP2010を選択→右クリック→ドライバーソフトウェアの更新→「コンピューターを参照してドライバーソフトウェアを検索」
- 参照ボタンをクリック→フォルダーを指定。(8cmのCD-Rからコピーしておいたフォルダーの中の\English\USB Driverフォルダーを選ぶ)
サブフォルダーも検索するにチェックを入れておく。 - 「次へ」と進んで、ドライバをインストール。
CD-Rに入っていたドライバはXPとWin7(Win7は64bit分のみ)用、使用したPCはWin8.1でしたが、正常に動きました。もしだめだったら、お蔵入りになっている激遅XPノートPCを使うつもりでした。
私の場合は必要はありませんでしたが……
もしドライバの署名の問題でインストールできない場合
Win Vista/7 → テストモード
Win 8以降 →「ドライバ署名の強制を無効」モード
でWindows PCを再起動してから、インストールしてみてください。
付属ソフトウェアの準備
CD-Rに入っていたものの中から、EZP2011 Portableフォルダーを探し、その中のEZP2011.exeを実行。
ここでちょっとしたトラブル発生。
操作中にエラーで強制終了したり、チップの検索ができなかったりしました。英語表示に直したのに、中国語表示に戻ったり。調べてみたら、別フォルダーのconfig.iniを参照しているようでした。
EZP2011 Portableフォルダーを現在の場所から取り出し(別の場所にコピー)、そこから起動したら直りました。
EZP2011.exe上で、"No Programmer Linked to computer!"とエラー表示される場合
まずEZP2010本体がPCに接続されているか確認します。
接続されていない場合
PCのUSBコネクタにEZP2010本体を接続します。
接続されている場合
本体のファームウェアのバージョンとドライバのバージョンが合っていません。ファームウェアのバージョンに合ったドライバを探してきてインストールし直します。
実はこの No Programmer Linked to computer! エラーにも陥りました。
先の動画の人が配布してくれているv2010用のドライバをインストールしてからEZP2011.exeを起動したら、エラー。
購入したEZP2010は、ファームウェアがv2011にアップデートされたものでした。
v2010用ドライバを削除し、付属CD-Rに入っていたv2011用ドライバをインストールしたら、エラーはなくなりました。
初期設定をカスタマイズ。初期設定では中国語表示のため、英語に変更しておきます。ついでにデフォルトのチップもW25Q128BVに。
- いったんEZP2011.exeを終了させる。
- \EZP2011 Portable\config.iniをメモ帳で開く。
-
[Run]の所の記述を次のように変更してから、上書き保存。
DefaultChipName =W25Q128BV
DefaultLanguage =English
BIOS Chipへ書き込み
EZP2010本体のレバーを立ててから、BIOS Chipをレバーに近い方に置きます。向きは本体の図の通りに。BIOS Chipが斜めにならないように、軽く押さえたままレバーを倒す→ 固定される。
※ 上の写真では少し斜めになってしまいましたが、実際にやるときは傾かないようにしてください。
設定をカスタマイズしてあるため、最初からW25Q128BVと表示されています。が、念のためDetectボタンを押し、ちゃんとW25Q128BVと認識されたのを確認してから作業に入りました。
-
BIOS Chipの現在の内容をバックアップ
Read→Save(ファイル名を付けて保存)
-
BIOS Chipの内容を消去してから、BIOSを書き込み、相違がないかチェック。
(Flash ROMの場合は書き込む前に要消去、とヘルプに書かれていました)Erase→Load(書き込むBIOSファイルを選択)→Prog(=Write)→Verify
Chipの消去・書き込み等にかかる時間は各1分前後。
書き込みが終わったら、本体のRunのところが光ってないのを確認してから、レバーを立てて、BIOSチップを外します。(この時チップを押さえておかないと、弾みでチップが飛び上がることがあります)
BIOS Chipを元のマザーボードに戻して、動作確認
電源ケーブル・ボタン電池は外しておきます。
-
BIOS Chipをマザーボードの元の場所に差す。
差す前に、足の形を直しておく。
BIOS Chipの向きを間違えない。
ソケットに全部の足を差し込む。
(差す場所がずれていないか、しっかり差さっているか) - マザーボードのボタン電池をはめる。
- 電源ケーブルをつなぐ。(コンセント-電源ユニット-マザーボード)
-
電源ユニットに切り替えスイッチがあれば、オンにする。(○ → |)
数秒後にマザーボードの通電ランプが点灯するはず。(マザーボード自体が壊れていなければ……) -
ケースの電源スイッチを入れる。(PCケースの電源ボタンのケーブルを、マザーボードのPOWER_SW+、POWER_SW-につないであること)
あるいは、マザーボード上のPOWER_SWITCH端子2つをマイナスドライバ等でショートさせて、起動する。(POWER_LEDではありません)
注意! 間違って他の端子をショートさせないこと。マザーボードが壊れます。
FlashしたBIOSファイルの内容に問題がなければ、電源オンの後、何度か再起動を繰り返してから、BIOSが起動します。
メモリスロットの隣に、CPU_LED、DRAM_LED、VGA_LED、BOOT_DEVICE_LEDの4つがあります。
CPU_LED点灯、再起動、点灯箇所がCPU_LED→DRAM_LEDと移る、再起動、という感じでBOOT_DEVICE_LEDまで光って、一通りチェックされた後にBIOSが起動。
書き込んだBIOSファイルの内容が適切でなかったため、最初の2回は失敗しました。(CPU_LED点灯・ファンが回り続けるだけだったり、ファン回転・CPU_LED点灯・再起動を繰り返す)
3回目に書き込んだBIOSが当たりで、ようやく正常に起動しました。
(先に書いたように、ASUS UEFI BIOSをFlashする場合はBIOSファイルの編集が必要です。編集内容については次回に記事にて)
この後、F1キーを押してBIOS画面に入り、BIOS設定しました。(ディスプレイ等は接続済で)
この時、F2キーかDeleteキーを押しても、F1キーを押せという指示が表示されます。これはCMOSクリアや通常のBIOS更新の時と同じです。
調べ上げるのに2日。ROMライターを注文、翌日着。
ドライバとソフトが使えるようにするのに少し手間取り、30分前後。
Flash作業と動作チェックを3回チャレンジで20分位。
BIOS起動できてからのBIOS設定が数分。OS起動確認。
以上で復旧完了でした。
得たものは、BIOSバージョンのロールバックが自由にできるようになったことと、今後BIOSを壊してもまた直せるという安心感。あと睡眠不足……。
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